今回 考えるきっかけになったのは、ある外洋レースに参加するレーシングヨットチームの落水者救助・安全講習会に、見学者として同乗させて頂いた中で
長年 外洋レースに参加しているチーム、クルー、スキッパーでも
ヒーブツーという技術を 知らない 又は、実際に使った事がないという事実を目の当たりにした事
衝撃的でした
これでは、そこから育つ初心者が知らないのは 無理もなく
入門者は 疑問を解決出来ないと思ったことから
今回の内容では、初心者レベルから脱する意識のある方に向けて、ヒーブツーの有用性を考えていきます
ヒーブツーとは なんだろう?
海上で船が走らないよう、波間に漂うように浮かべておく技術のことを、ヒーブツーといいます
日本語ではちちゅう(踟躊)と言うそうですが、使っている人に会ったことはありません
遠い昔の帆船用語なのでしょう
帆船であるヨットに限らず、エンジン機関で進む大きなタンカーやコンテナ船でも、嵐の中ではヒーブツーしているようです。この場合はセールが有りませんので、機関でスクリューをスロー回転させて船体をコントロールしている
ここからは4動画を観ながらイメージをつかんで下さい↓
オフショアセーリングスクール ‐ ヒービングツー
セーリングスクールのヒント動画 風も穏やかな水面で訓練向きな内容になっています
初めの風に対する進行方向(ポイントオブセール)は横からの風(ビームリーチ)のようです。 ここからヒーブツーに入ろうとしていますので、0:35で ジブシートを引き込む動作がある
ジブセールをいっぱいに引き込んだ状態から ヒーブツーへ入るのを基本と考えてください。 その後にジブセールの形状を変えることで、船体のバランスを調整することはある。全てはバランスです
1:00辺りで、逆ジブにしてヒーブツーの体裁はできていますが、ヨットはまだ前進、右に進路をかえていますね。 これでは再び タックをしてしまう可能性があり上手なサンプルとは言えません
この状況からヒーブツーを完成させるためには、風下に切ったティラーを中立~風上方向にもどし、進路をクロースホールドの範囲まま、行き足(惰性推進力)が無くなるように努めて下さい。
ストッピング ザ ボート - ヒーブツー
こちらの動画では、シンプルにヒーブツーへ入っている
この程度の風であれば、あなたにも直ぐに出来ます
タックをした後、1:50あたりから メインシートをリリース(出す)していますね。これは、メインセールからの推進力を無くすための動作でしょう。それぞれのヨットに特性もありますので、一概に 出せば良いということではありませんし、出さなくてもヒーブツーは出来ます
ヨットの行き足を十分弱めたのち、ティラーを風下に切り(ヘディングアップさせる)逆ジブで風を受け止め 停止させています。(ここ重要:ブレーキの役割を持たすことができる)
停止させたのち、風に対してバウ(船首)をどの程度向かせたいかによって メインセールの出しかたも加減する必要があります
メインセールを引き込めば バウは風上方向を向きやすくなり、出せば すこし風下を向いていきます。ここでもあなたのヨットの特性を判断してティラー角度と、セールのバランスを導き出すことが重要です
風に対してバウが向くとは=波に対して、バウが直角方向にちかく向く と思って下さい。
アメリカンセーリングアソシエーション - ヒーブツー
こちらも アメリカのヨットスクールからの動画で、シンプルにタッキングからのヒーブツーへ移行している
0:47あたりでヒーブツー前のタック(風を受ける舷)が一致していないので混乱なさらないようにご注意くださいプンプンですね
ジブセールの移動なく ヒーブツータッキングをして1:20あたりまで、クロースホールドのまま 慎重に行き足が無くなるよう我慢している様子がみられます
その後 ティラーを風下へ固定する
1:22から ヒーブツー状態での メインセールとジブセールの作用の説明がありイメージしやすいかと思います
ヨットの行き足が止まり、その後にティラーを風下方向に固定することで、ヒーブツーの完成です。ここでもあなたのヨットの特性に合わせてティラーの角度を調整することが重要。 バランスですね (セールの形、大きさのバランスも含みます)
Yachtorial How to “Heave To”
個人が制作した YouTubeチャンネルですが、簡素にみせてくれています
クロースホールドから、ジブの移動は無く スムースにヒーブツーへ入っていく様は手馴れたセーリングですね
この程度にセーリングできるように成るには、500時間ほどセーリングのみで帆走する訓練が必要かもしれません。 しかし年間にすれば 8時間を63日 月に5・6日ほど遊んだら 1年で到達できる計算
あなたは、ヨットでたのしく遊んでいるだけなんですから、習得は難しくないですよ
1:00と1:30から ティラーを固定する際に、カチッと音がしています。
これティラークラッチという便利なモノを使用しています。これホントに便利。
ここまでで ヒーブツーとは? そんなイメージはつかめたかと思います
じゃあ、この技術を使ってなにするの?
そのあたりを考えていきましょう。 多くの場面で有効な方法ですから
ヨットクルージング時での利用場面
本来の目的としては、荒天対策として生まれた技術であったはずですが、それ以外でも多くの場面で利用できます
風力2以上ビューホート風力 の風があれば有効な技術なので、利用場面を知っておくと便利でしょう
- セール交換・メインセールリーフィング
- シングルハンド時の休息
- 荒天時の漂泊
- お気軽セーリング時のお昼寝 食事
- 落水事故発生時のレスキュー法
私は、他にも利用していますが、ここではケチって紹介しません。ヒントは①
ご自身でセーリングしながらヒーブツーの特性を探究すると、みえてくるはず
500時間のセーリング航行を楽しんでください
ジブセール交換・メインセールリーフィング
セーリングで帆走っていると、空模様があやしくなって、風が強く吹き始めることが 普通にあります
そんな時には、はじめにジブセールを小さくします。大きなジェノアを張っていたなら、レギュラーサイズ(メインセールにオーバーラップしない大きさ)に交換する。 嵐になったなら、ストームジブを張る
最近のクルージングヨットでは ファァーリングシステムを搭載していることが多いですがその場合でも、巻きとって小さくします。(ラフフォームの付いてないセールでは推奨しません)
ジブセールをレギュラーまで小さくした後、メインセールを小さくリーフする
これらの際に、安全な作業環境を手にいれるための 一手段が、 ヒーブツーです
ヨットは止められる。 止まったデッキの上で作業すれば簡単に ジブ交換も、メインセールリーフもできる
やってみてください。 論より証拠! 御自身で立証できますから
シングルハンド時の休息
長距離のクルージング旅行にでかけて、一泊・二泊と海の上で過ごしてみると実感するんですが、波のある海面を進むヨットの中ではけっこう振動を感じます
揺れることは問題にしませんが、波があたる衝撃や 波間におちる衝撃は疲労の原因になってくる
こんな疲労を感じたら、ヒーブツーを使って ゆっくり休んでしまいましょう。
波間にゆられ、目を閉じる。 心地よい睡眠が手に入る方法です
荒天時の漂泊
荒天って、どの程度とか考えてしまうところですが。これ、あなたが荒天だとかんじたら、荒天! まちがいありません
あなたが、このままセーリングを続けていられないと感じたなら、無理をしないで ヒーブツーでOK
もちろん、ヒーブツーは完全な停止は出来ませんので、風下に流されても安全な(風下に岸等が無い)エリアでしか使用できないのですが
短時間で通過する、小型の低気圧・前線・気圧の谷が通過して、アレッ?もう晴れ間がみえた!そんな、短時間に変化する荒天なら
無理にセーリングせずに、ヒーブツーでの安全確保と休息も、選択肢になる
結果、強風の中で大きなジブセールを 無理にファーリングしようと試みたものの、出来ずにセールを破損させたり、はては 荒れる海面での作業中にクルーの落水事故をまねいてしまっては 楽しくありません
もちろん、本気の嵐にあってしまったのであれば、あらゆる手段を用いることは必要ですが、その後にヒーブツーで寝てしまうと、怖さも気になりません。 これ実体験www私は怖いときには 寝ることにしています
嵐といえる強風の中であれば、全てのセールを下ろしてしまっても、マストや船体に当たる風だけで大きな抵抗に成りますので、ヒーブツーは可能です
お気軽セーリング時のお昼寝 食事
単純に、ピクニック要素をもったセーリング遊びをしている休日を、さらに充実させる方法としてヒーブツーは有用です
風にまかせて漂う感覚のなか、ランチやお昼寝なんて 最高に贅沢な時間でしょう
パートナーやご家族に、こんな過ごし方が ヨットにはあるんだと伝えることも、あなたのヨットライフを充実させる一助になる
結果、一緒にヨットへ乗ってくれる機会も増えそうでしょ
落水事故発生時のレスキュー法
ヨットを止める技術は、事故発生時に本領を発揮する
いくつかのレスキュー法がありますが、いずれにしても ヨットを止める必要性は変わりません
海に浮かんだ落水者を、ヨットのデッキまで乗せることが出来て はじめて救助完了ですから、ヨットを止める。どんな海況でも、ヨットを止められる技術を持つことが重要
↓次のセクションでレスキューについて考えています↓
まとめ 救助方法としての有用性
いまだに、日本のヨット乗りの中では セーリング中のヨットから、海に人が落ちた場合には、セールを下ろし、エンジンを使って救助にあたると信じている、あるいは そうするしか出来ない知識と 技術レベルにある人が多いようです
これ、古い思考だし、成長を拒んだ結果だと 私は思っています
このサイトでは、ヨットに乗って 柔軟な思考と、豊富な知識・経験値を身につけることを推奨しています
それが、ヨット遊びを 楽しく・多くの時間・長年にわたって楽しむ事につながると信じているからです
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